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2023.04.07

相続税・贈与税の令和5年度税制改正

令和5年度税制改正が3月28日に国会で成立し相続税と贈与税が大きく変わります。

既に昨年12月に税制大綱が発表周知され、ご存じの方も多いかと思いますが、相続対策の改正点・注意点を改めてご案内致します。

 

「暦年課税制度」改正前 相続開始前3年以内の贈与加算(持ち戻し)

相続財産を減らすため、110万円の贈与税の基礎控除を使い暦年ごとに財産を少しずつ減らすことは広く行われてきました。この暦年課税制度は亡くなる直前の相続課税の回避を防ぐため、相続発生から3年以内に相続人に対して行った贈与は全額を相続財産に加算をして相続税の計算をします(相続人でない人に行った贈与は持ち戻しにはなりません)。

例えば、贈与税がかからない範囲で亡くなる10年前の期間に毎年100万円ずつを奥さんと子供1人、孫1人に現金を贈与した場合、財産から3,000万円が減りますが、うち相続発生から3年以内に贈与した相続人の奥さんと子供の分600万円は相続財産に戻して相続税の計算をすることになります。結果、実際に相続税の節税に資産を減らすことが出来たのは2,400万円となります。

 

贈与税の基礎控除 110万円
持ち戻し 相続人に対して行った贈与で、死亡日から3年間遡る
・令和5年3月15日死亡: 令和2年3月15日~令和5年3月15日の贈与分

 

「相続時精算課税制度」改正前

60歳以上の両親及び祖父母から18歳以上の子世代あるいは孫世代に贈与する方法に相続時精算課税制度があります。親世代の流動しにくい資産を早くに子世代等に移動させ、市場でその資産を流動させることを目的に平成15年に制度化されました。

累計2,500万円までは贈与税は非課税で、2,500万円を超えた額も通常の贈与税の高い累進税率は適用せず一律20%の税率となります。納税した贈与税は将来の相続税に充当するため、相続税の前払いの意味を持ち、納税した贈与税が多い場合は還付されます。

しかし、この制度は贈与した資産全額を贈与時点の評価で相続財産に戻して相続税の計算をするため、相続財産から切り離すことはできません。そのため、将来、評価が上がる財産を安いうちに渡すためや収益を生む財産を贈与してその収益を切り離すなど、限定的な利用に留まります。

加えて相続時精算課税制度を一旦選択すると暦年課税制度は使えなくなり、110万円の贈与税の基礎控除のメリットを享受できなくなります。

このため、相続時精算課税制度の利用は進まず、令和3年分の贈与税の申告をした53.2万人のうち、暦年課税制度が48.8万人、相続時精算課税制度が4.4万人でした。

 

対 象 60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与
贈与税 2,500万円まで非課税、2,500万円超は一律20%
相続税 贈与した全額を相続財産に含めて相続税の計算を行う
その他 相続時精算課税制度を選択すると暦年課税制度は使えなくなる

 

 

令和5年度税制改正

①「暦年課税制度」7年の持ち戻し

令和5年度の税制改正で暦年課税制度の相続財産に持ち戻す期間が3年から7年に延長されました。令和6年1月1日から贈与した財産が対象となり、持ち戻す期間は令和9年から段階的に長くなります(下表を参照)。

令和6年中にした贈与は改正前であれば3年を経過することで相続財産から切り離しが出来ましたが、これが7年を経過する令和13年まで持ち戻し資産となります。

相続税・贈与税は、多額の資産を有する特定の人に資産を固定化させない再分配機能の目的があり、持ち戻しの期間延長によって相続税は増税し、広く課税する仕組みになります(持ち戻しの期間はドイツ10年、フランス15年と諸外国は長い期間を設定しています)。

なお、延長した4年の期間内に贈与した合計額から100万円を持ち戻しから控除することができます。

 

贈与税の基礎控除 110万円 / 同じ
持ち戻し 相続人に対してされた贈与で、死亡日から7年間遡る
令和6年1月1日からの贈与分が対象
延長した4年間の贈与の合計額から100万円を控除
・令和8年3月15日死亡:   令和5年3月15日~令和8年3月15日の贈与分(実質3年分)
・令和10年3月15日死亡: 令和6年1月1日~令和10年3月15日の贈与分(実質4年少し)
・令和13年3月15日死亡: 令和6年3月15日~令和13年3月15日の贈与分(実質7年分)

 

②「相続時精算課税制度」の110万円基礎控除の創設

一方、税制改正で相続時精算課税制度は大きな改正がされ、暦年課税制度と同様に110万円の基礎控除が創設されました。

相続時精算課税制度は少額の贈与であっても暦年ごと税務申告する必要がありましたが、改正により令和6年1月1日以降の贈与から110万円以内であれば申告は不要になります。これまで相続時精算課税制度では全ての贈与財産を相続財産に加算していましたが、当該控除分は相続財産に加算が不要となります。加えて控除した110万円までの持ち戻しは、暦年課税制度が7年間必要になるのに対して改正された相続時精算課税制度は持ち戻しがなく、確実に相続財産を減らすことができます。

更に、贈与後に災害により被害を受けた土地建物は相続時に課税価格の再計算の見直しができるようになり、土地建物に限り棄損した場合など適正な相続評価をしてもらえます。

相続時精算課税制度は使い勝手のよい制度に改正され、若年世代へ早期に資産移動を進める国の意向が明確に示されました。

 

対 象  60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与 / 同じ
贈与税 2,500万円まで非課税、2,500万円超は一律20% / 同じ
令和6年からの贈与は110万円までを控除
・令和6年8月15日に200万円贈与: 非課税枠2,500万円に対して90万円を税務申告
相続税 贈与のうち令和6年1月1日以降に贈与した分は暦年ごと110万円までを控除した残りの全額を相続財産に加算して相続税の計算を行う
110万円までの控除部分の持ち戻しはなし
その他 相続時精算課税制度を選択すると暦年課税制度は使えなくなる / 同じ

 

どちらを選択するか

税制改正により相続時精算課税制度が相続対策に有利にありますが、使うには年齢の制限があり、誰もが使うことはできません。

また、相続税がかからない範囲の財産であれば、暦年課税制度の方が税務署への登録や申告がなく容易にできます。更に代襲相続※でない孫は相続人にならないため、暦年課税制度であっても持ち戻しは適用されないので、相続時精算課税制度とどちらを選択するか比較して検討することが大切です。

※代襲相続: 相続人となる子が被相続人の死亡以前に死亡していた場合、その子供(孫)がその権利を引継ぎ相続人となる。

 

今回の税制改正は令和6年1月1日から贈与した財産が制度の対象となるため、暦年課税制度は本年12月31日までの贈与であれば、相続税の計算に持ち戻しになる期間は3年になり、贈与を予定している場合、本年末までにするのが得策です。一方で、持ち戻しのない相続時精算課税制度を使い令和6年1月1日以降に贈与することで、7年以内に相続が発生しても持ち戻しを110万円まではしなくて済むようになります。

 

贈与の管理

暦年課税制度が今後は長期に渡り遡るため、贈与した内容を管理することが必要です。遡りが死亡日から7年前の日から贈与した分になるため、額面だけでなく何月何日にしたかもあわせて記録が必要です。

暦年課税制度は110万円以下であれば税務申告がなく容易に贈与ができ記録などを残すことは多くありませんでしたが、令和6年以降の贈与は110万円以下であっても記録を残すことで将来発生する相続税の申告を容易に進めることができます。

なお、贈与は口頭でも成立しますが、贈与はその都度「贈与契約書」を作成し、お互いの署名・押印をして保管しておくことをお勧めします。「贈与契約書」によりお互いの意思が明確になり、税務申告が必要な場合の証明になります。

 

相続対策は相続税の節税だけでなく、遺産の分割や納税資金の準備などトータルで検討すべきものですが、相続税・贈与税の制度が大きく変わるため、贈与を活用して相続対策をされる方は、税理士やファイナンシャル・プランナーなど税務の専門家に相談しては如何でしょうか。

当社でもご相談に対応しております。

 

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