2023.03.03
大きく変更された令和4年度第2次補正予算の『事業再構築補助金』

ウィズコロナ・アフターコロナ時代に成長分野へ支援拡充
令和3年3月に始まった事業再構築補助金は現在、第9回の公募が3月24日締め切りで進められています。事業再構築補助金は、コロナ感染が猛威を振るい、国内の疲弊する中小企業事業者に対して「新分野展開」、「事業転換」、「業種転換」、「業態転換」、「事業再編」の5つの類型について事業再構築に意欲を持った事業者を支援することを目的にスタートしました。その後、カーボンニュートラルやCO2排出削減など地球温暖化対策を支援する「グリーン成長枠」や最低賃金引上げの影響を受ける事業者を支援する「最低賃金枠」など事業の対象が増えました。
採択結果は、発表されている第7回までで応募総数134,518件、採択数60,304件(採択率44.8%)で、長野県内では2,878件の応募で1,452件(同50.5%)が採択されました。採択はおよそ2件に1件で、応募件数にカウントされていない書類不備が第1~3回の公募で応募件数の10~15%ほどあるといわれ、これらを含めた実際の採択率は更に低くあります。
採択されるには事業再構築の計画が明確に示されてかつ高い事業性(付加価値額の増加)が求められ、難易度の高い補助金と言えます。
応募件数と採択件数
全国 | 長野県 | |||||
応募件数 | 採択件数 | 採択率 | 応募件数 | 採択件数 | 採択率 | |
第1回 | 22,231 | 8,016 | 36.1% | 501 | 206 | 41.1% |
第2回 | 20,800 | 9,336 | 44.9% | 394 | 201 | 51.0% |
第3回 | 20,307 | 9,021 | 44.4% | 463 | 221 | 47.7% |
第4回 | 19,673 | 8,810 | 44.8% | 447 | 230 | 51.5% |
第5回 | 21,035 | 9,707 | 46.1% | 459 | 229 | 49.9% |
第6回 | 15,340 | 7,669 | 50.0% | 315 | 188 | 59.7% |
第7回 | 15,132 | 7,745 | 51.2% | 299 | 177 | 59.2% |
合計 | 134,518件 | 60,304件 | 44.8% | 2,878件 | 1,452件 | 50.5% |
事業再構築補助金は令和5年度も継続し、昨年末に成立した令和4年度第2次補正予算で事業再構築事業は大きく見直しがされ、先の類型に新たに「国内回帰」が追加されました。
詳細は公募要領が発表されてからになりますが、ウィズコロナ・アフターコロナ時の経済社会に対応した成長分野への取組支援が拡充され、新たに「産業構造転換枠」や「サプライチェーン強靭化枠」などが創設されました。昨今の経済成長に必要な賃上げへのインセンティブを設け、また、「成長枠」と「グリーン成長枠」では補助金を上乗せし上限額の引上げが図られました。
一方、要件の直しがされ売上高減少要件がなくなり、コロナ禍でも業績を維持・拡大してきた事業者の応募が可能になると推測され、これらの事業者にとっては補助金獲得の大きなチャンスとなると思われます。新たに創設された内容を中心にご案内致します。
「産業構造転換枠」の創設
国内市場の縮小等の産業構造の変化等により、事業再構築が強く求められる業種・業態の事業者を重点的に支援する「産業構造転換枠」が創設されました。具体的な支援として、「補助率の引上げ」や「廃業を伴う場合の上乗せ」があげられます。補助要件は、事業の付加価値額が年率平均3.0%以上増加で、下記のいずれかを満たすこととされています。
① 過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上縮小する業種・業態に属していること
②地域における基幹大企業が撤退することにより、市町村内総生産の10%以上が失われると見込まれる地域に属し、当該基幹大企業との直接取引額が売上高の10%以上を占めること
これらの要件は、客観的な判断資料が必要なため、①は3月上旬から受付開始予定の業界団体による業種が指定され、②は該当する自治体が資料作成し指定された地域となる予定です。
産業構造転換枠の補助上限額・補助率
従業員規模 | 補助上限額※ | 補助率 |
20人以下 | 2,000万円 | 【中小企業】2/3 【中堅企業】1/2 |
21~50人 | 4,000万円 | |
51~100人 | 5,000万円 | |
101人以上 | 7,000万円 |
※廃業を伴う場合には、廃業費を最大2,000万円上乗せ
「サプライチェーン強靭化枠」の創設
海外で製造する製品・部品等の国内回帰を進め、国内サプライチェーンの強靭化や地域産業の活性化に取り組む事業者を支援する「サプライチェーン強靭化枠」が創設されました。補助上限額が大幅に引き上げられて最大5億円の補助となります。
海外の政情不安や円安による輸入コストの増大が国内経済にもたらした大きな影響を背景に、国際競争に打ち勝つサプライチェーンを国内に構築する事業者を強力に支援します。なお、対象となる業種は製造業に限定されます。
国内に生産拠点を整備するため補助事業実施期間が大幅に延長され、交付決定より28ヶ月以内(採択発表日から30ヶ月後の日まで)とされます。補助要件は、事業の付加価値額が年平均5.0%以上増加で下記の要件等を満たすこととされています。
① 取引先から国内での増産要請があること
②取り組む事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していること
③交付決定時点で設備投資する事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高く(新規の場合は同等の雇用計画)、事業終了後3~5年で給与支給総額を平均2%以上増加させること
サプライチェーン強靭化枠の補助上限額・補助率
従業員規模 | 補助上限額 | 補助率 |
--- | 1,000万円~5億円 (建築費を含まない場合は3億円以内) |
【中小企業】1/2 【中堅企業】1/3 |
「グリーン成長枠のエントリー枠」の創設
「グリーン成長枠」は、要件を緩和したエントリー枠が創設され従来のスタンダード枠と二つの類型に分けて、2050年のゼロカーボンに向け取り組みがしやすいように変更されました。
グリーン成長枠の類型
エントリー枠 | スタンダード枠 | |
付加価値額 | 年率平均4.0%以上増加 | 年率平均5.0%以上増加 |
グリーン成長戦略「実行計画」の課題解決の取組 | 1年以上の研究開発・技術開発 従業員5%に対しての人材育成※ |
2年以上の研究開発・技術開発 従業員10%に対しての人材育成※ |
事業終了後3~5年の給与支給総額 | 年率平均2%以上増加 |
※人材育成は年間20時間以上
グリーン成長枠の補助上限額・補助率
エントリー枠 | 従業員規模 | 補助上限額 | 補助率 |
中小企業 | 20人以下 | 4,000万円 | 1/2 (大規模な賃上げの場合2/3) |
21~50人 | 6,000万円 | ||
51人~ | 8,000万円 | ||
中堅企業 | --- | 1億円 | 1/3 (大規模な賃上げの場合1/2) |
スタンダード枠 | 従業員規模 | 補助上限額 | 補助率 |
中小企業 | --- | 1億円 | 1/2 (大規模な賃上げの場合2/3) |
中堅企業 | --- | 1.5億円 | 1/3 (大規模な賃上げの場合1/2) |
※大規模な賃上げ: 事業終了時点で①事業場内最低賃金+45円と②給与支給総額+6%を達成すること。
新たな事業再構築補助金は、3月下旬に第10回が公募開始予定にあり、来年の3月までに3回程度の公募が予定されております(サプライチェーン強靭化枠は1~2回程度)。
これまでに事業再構築補助金に採択された事業者は、今回創設された補助事業に申請が可能で、第1~9回で「グリーン成長枠」以外で採択を受けた事業者は、「グリーン成長枠・産業構造転換枠・サプライチェーン強靭化枠」に、「グリーン成長枠」で採択を受けた事業者は「サプライチェーン強靭化枠」に2回目の申請が可能となります。
売上高減少要件が撤廃となり、成長事業を強力に支援する新たな事業再構築補助金を活用し事業の見直しを進めては如何でしょうか。お不明の点は弊社へお問合せください。